百田尚樹・「影法師」

「影法師」百田尚樹 講談社文庫 ★★

ふと目に留まった百田尚樹さんの著書。
意外にも、百田尚樹さんからは遠いと思っていた「時代小説」だったので、興味を引いた。
僕の最も好きな作家・藤沢周平さんを模したものか、江戸時代の架空の藩を舞台にした小説でした。
藤沢周平さんほど当時の言葉を使わないし、サムライやご息女の凛とした生き様は軽めになっているが、とても読みやすい。
藤沢周平さんのファンなんじゃないかな?と、親近感を持ちました。

もう戦乱の世は遠くなり、武士の世界も腕っ節一つで成り上がれる時代ではなくなった。
まして大名家を渡り歩き、現代のプロスポーツ選手のように年俸を飛躍的に上げていくこともできない平和な時代になった。
身分制度が確立し、最上位に位置する武士階級でさえ、戦国の世の先祖の功績のまま上士・中士・下士の身分制度が固まっていた。
どんなに勉学に励み、如何に剣術が優れようとも、下士は父親の跡を継ぎ家禄を守るのみの世界。

そんな世に、下士の嫡男として生まれた戸倉勘一。
幼い時に、父に連れられ妹と共に川に釣りに行った帰り、上士に土下座の礼を取らなかった兄弟を庇い、父が斬られる。
お家取り潰しは免れるが、勘一が出仕するまで家禄を半減させられてしまう。
この時、父の遺体を丁重に扱ってくれたのが中士・磯貝家だった。
ここで後の竹馬の友となる磯貝彦四郎に出会う。

藩校に通う金が家にないので私塾に通い、道場に通う金がないので庭で独学で剣術稽古に励んでいる。
私塾の成績が優秀ゆえ、先生に藩校への入学を勧められるが金が無い。
非業の死を遂げた父親も頭脳明晰だったので藩校に入ったが、下士からの入学はほぼゼロの世界だから、虐めにあい退学した。
その無念を注ぐチャンスであったが・・・。
それを母親に打ち明けたら、金を工面され応援される。

案の定虐めにあったが、それに屈せず体当たりで上士の子に反抗し、ついに怖がられいじめられることがなくなった。
この時、最初に勘一の筋の通った立派な行動を見て、真っ先に友達になってくれたのが、前述の磯貝彦四郎だった。
磯貝の引きで、藩内トップの剣術道場に通うことになる。

彦四郎は、同年代で剣術も学問も飛び抜けていた。
後に数年に一度の藩主の前での天覧試合でも優勝した。
家督を継げない中士の次男坊ではあったが、いずれ婿入りし大を成すと、将来が嘱望される存在であった。
しかし、彦四郎は思いもかけないことで脱藩してしまう。
対して勘一は、数度の危機を乗り越え名を挙げ、中士の養子となり、異例の出世を遂げて、代官・側用人・江戸家老を経て、筆頭
国家老にまで出世した。

筆頭国家老を拝命し、二十数年ぶりに戻った国元で彦四郎の消息を知ったが、すでに竹馬の友は世を去っていた。
あれだけの秀才が何故、思いもかけない事件を起こしたのか?
あれだけの剣術の持ち主が、何故上意討ちに失敗し職を解かれたのか?
それを探っていくうちに、勘一の今の立場の影に彦四郎がいたことを知る。

藤沢周平の「蝉しぐれ」を髣髴とさせる素晴らしい物語だった。
このような物語は何時の時代でもあるだろうが、身分制度他、がんじがらめの日本の歴史史上最も庶民が夢を抱けなかった江戸時代を背景にすることで、時代をしなやかに生き、しかも凛とした品位を持って生きる日本人の姿が際立つ。

蝉しぐれ同様、映画化が望まれる作品でした。
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