新・平家物語・全16巻 吉川英治

「新・平家物語・全16巻」吉川英治 講談社 ★★

過去、一度読んだことがある「平家物語」の吉川英治版です。
「祇園精舎の鐘の音、諸行無常の響きあり」で有名な冒頭で始まる平家物語は、教科書で一部読んだのが始まりです。
冒頭の言葉は暗記させられたように記憶している。

読書好き・歴史好きの僕が、惹かれるのは戦記物です。
多数の戦国時代物は、男の子なら誰でも血沸き肉踊ると思いますが、鎌倉時代から室町時代へ変わる時代を描いた「太平記」と、初めて武士政権が成立した平安末期から鎌倉時代に移る「平家物語」にも僕は惹かれます。

この2つの書は面白いのですが、とても長い。
「太平記」も長いが、「平家物語」は更に長い。
中国の「三国志」はもっと長いけど、あれは登場人物が中国名なので、混乱してわからなくなり、2度挑戦したが読了に至っていない。
やはり日本のこの2つの書がいい。

天皇や法皇を警護するため、清涼殿の滝口や、院御所の北面に武士が駐屯していた。
貴族である藤原氏を窓口に、地方豪族の師弟が京に上り、交代で勤めた。
天皇在所の清涼殿警護の滝口武者から自力をつけていったのが、平将門などの時代で、公地公民制が名目的となり、税金を治めなくても良かったり軽減されていた寺社や貴族に全国の土地が集まり、政治的には貴族の専横がきつく、庶民は苦しい生活を強いられた。
船を持つものは、倭寇となって朝鮮半島や中国大陸に出稼ぎしたりするようになり、武力という力を持った武士が、貴族への反乱を起こしたのが、平将門・藤原純友の乱であった。

それは失敗に終わったが、次第に武士の武力を貴族では抑えられなくなり、貴族間の政権奪取を伴う対立に、子飼いの武士を使ったのが「保元の乱」「平治の乱」であった。
この2つの乱の主役が、源義朝であり平清盛です。
その生い立ちから、この書は始まる。「保元の乱」でともに勝利した両者ですが、再びの戦乱「平治の乱」で袂を分かち、平清盛が勝利し、敗戦した源義朝は本拠地関東に下る途中で、同じ源氏であった同族に裏切られ散った。

武士の2大勢力の一角・源氏が野に下ったので、中央政権は平氏・平清盛が台頭し、対抗馬を失ったために貴族も天皇・法皇も、武士の力を削ぐことが出来なくなり、ついには武士が殿上に上がり、直接天皇や院と会話し、貴族おも動かし、清盛は武士初の太政大臣にまで上り、政治を動かす存在になった。
そして天皇に平氏の娘を嫁がせることで、天皇の外戚の地位を得、中央政権の各種要職を占めるようになっていった。
ついに、清盛の義理の弟・平時忠が、「平家に非ずんば人に非ず」という有名な台詞を吐くほどな栄華を誇った。

しかし、冒頭の「盛者必衰の理をあらわす」の言葉通り、平家の専横を良しとしない後白河法皇の反撃が始まり、地に伏した源氏諸氏に檄文が飛び、源義朝の遺児・頼朝が伊豆で旗揚げし、木曽では義朝の弟の嫡子・木曽義仲が呼応した。
頼朝は地方平氏勢力に潰されそうになった危機を脱し、鎌倉を本拠地に関東の源氏を糾合し自力を蓄えることに専念した。

一方義仲は、信州から北陸道に出て、倶利伽羅峠の戦いで、平氏の本隊に大勝利し、一気に京に攻め入り、平氏を京から追い出した。
喜んだ後白河法皇だけど、田舎者の木曽勢の乱暴に幻滅し、頼朝に檄を飛ばす。

木曽義仲と源頼朝は、同じ源氏でお爺さんが源為義です。
為義の嫡男が義朝が次の河内源氏の頭首であったが、父・為義と仲違いして、京を逐電し、本拠地関東に帰ってしまった。
才覚により自力をつけてきたので、為義は義朝の逐電により嫡男になった次男・為朝を関東に派遣し、義朝を討とうとした。
これを察知した義朝は、為朝を急襲し討ち取ってしまった。
嫡男義仲は危うく木曽に逃れ、信州で勢力を蓄えていた。
つまり、2人は従兄弟同士なのですが、親の敵なので協力する下地がない。

頼朝は、大将軍に弟・範頼と義経をして、関東武士団をその下に付けて西上した。
範頼・義経軍は、木曽軍を凌駕するほどの軍勢ではなかったが、木曽軍の統制が取れておらず、破竹の快進撃した勢いは既になく、内部瓦解に等しい状態で義仲は近江の地に散った。

京の鎮守将軍となった義経の治安維持能力が素晴らしく、同じ源氏でも義経軍の将兵は略奪行為もせず、京に平和が戻るように思われた。
しかし、京から西下した平家が、本拠地の西海・九州で勢力を盛り返し、長門国・壇ノ浦、讃岐の国・屋島を本拠地に、かつて清盛が一時都を移した摂津国・大輪田の泊・福原に大兵力を上陸させてきた。

ここからまた義経の有名な大活躍が始まり、一の谷・屋島・壇ノ浦で次々に平家軍を打ち破る。
こうして天下を取った頼朝ですが、織田信長や豊臣秀吉の没落同様、自らの猜疑心により義経を遠ざけ、奥州藤原氏に逃げ込んだ義経を討つようにし向け、義経を失った奥州藤原氏を弱しと攻め立て滅ぼした。

次に、子飼いの弟・範頼も陰謀で討ち、裸同然になり、頼朝の死以降は、頼朝の血筋を保護するものがおらず源家も滅び、平家の血筋である北条氏が、鎌倉幕府の執権という立場で実権を握る。
結局、平氏・源氏とも滅んでいく。
頼朝に、讒言で義経を遠ざけさせた梶原景時は、頼朝亡き後すぐに政権中枢を追われ、京に逃げる途中で一族・郎党もろとも討ち取られた。

数々の盛者必衰の逸話が散りばめられた物語から、組織が瓦解するのは内部要因がほとんどだなとの認識を更に深めました。
頭領の家族や部下への猜疑心が、自らからの離反の原因になり、その「弱い者いじめ」の行為は周りに見られており、周りから自分が取り除かれて行く。

一ノ谷合戦で、青年・平敦盛を討ってしまった熊谷直実が、法然のもとで髪を下ろし・・・
屋島の合戦で名を上げた那須与一の弟・大八郎が、九州平家落ち武者追討の過程で、山奥の椎葉村で出会った平家部落に郎党ごと同化して、平家の姫と幸せな数年を暮らすラブロマンスも、「盛者必衰」へのアンチテーゼ的に語られ、物語としてよく出来ている。

長編故、僕の飽き性もあり、途中で他の本への浮気も数多く、読破に結局1年弱を費やしてしまった。
でもこれは、一気に読んでしまい楽しみを失うより、長く楽しもうとした故もある。
その間、「安宅の関」や「平時忠が流された能登半島珠洲の時忠家」も、大きな感慨を持って訪問できた。

判官びいき故、義経にも惹かれるが、やはり木曽義仲が最も魅力的に映った。
正妻と2号さんが、それぞれの女性部隊を率いて、戦場で行動をともにするなんて、女性から見てどれだけ魅力的な人物だったか想像できる。
倶利伽羅峠も探索してみたいし、椎葉村もじっくり訪ねたい。
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No title

こんばんは~
平家物語全16巻ですか~長いですね。
次から次へとページをめくれるようなものでないと私には無理です(笑)
「祇園精舎の・・・」最初の一行だけは暗記させられました。

北陸からの日本海側と瀬戸内海にわたる西日本圏内には平家伝説などが
残されているスポットが多くありますね。
のりまきさんのように歴史に詳しければ
そういうところをめぐる旅がすごく面白いだろうなあといつも思います。

猜疑心・・・今の時代のどの分野の人間関係もあまり変わってないのでしょうね。

No title

まんとさん
16巻は長いです。飽き性の僕では、とても一気に読めません。
途中他の本に浮気しながらもコンスタントに読めたのは、この歴史小説の物語力です。あまりに有名なので誰でも知ってる内容なのに、やはりその場面が来るとワクワクしちゃいます。
歴史小説は、架空の場所ではなく、今でもある場所なので、それへの興味も湧きます。
ああ、楽しかった。
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