地団駄は島根で踏め わぐりたかし 光文社新書

前回楽しく読めた語源ハンター氏のもう一冊です。
「ゴリ押し」「あこぎ」「二の舞」など全32の語源を現地で探り触れる旅ノンフィクションです。
1つの語源にフォーカスしながら、その土地の人とのふれあいや名物・うまいもんなど、ハプニングも含め自然にユーモラスに書かれており、好感が持てます。

僕が「街道を往く・司馬遼太郎」や、NHK朝ドラ「まれ」のワンシーンを実際に見たくて、バイクツーリングに出るのと似ている。
最初の目的は1つなのだけれど、道中の歴史遺産を一筆書きに訪問し、そこで感じたことを書き残すツーリング紀行に似ている。
海音寺潮五郎や山本周五郎の史伝も、その場所を見てみたい心に響きます。
同じ史実でも、見方によっていろいろに見え、後の為政者が自分に都合のいいように書き残す歴史書と真実自体が違うこともある。
一般的な歴史小説は、作家が調べたいろんな説を種々選択し、自分が考える一本の歴史を書くものだが、史伝は「こういう説もあります。でも私はこうだと思う」と注釈のように本文中に書かれている。
これを読むと、「僕はその場所に行けば、いずれの説を真実だと思うだろう」と、なっちゃう。

「縁の下の力持ち」は、大阪の四天王寺さんに語源があった。
この寺を建立された聖徳太子さんを顕彰する「精霊会舞楽大法要」の長年完全非公開だった「縁の下の舞」というのがある。
縁の下で舞われるから「縁の下の舞」で、大阪の「いろはがるた」に採用され、やがてそれが東下していく過程で、名古屋あたりから「縁の下の力持ち」と変化し、今に伝わるそうだ。

「お払い箱」は、お伊勢さんに語源がある。
由緒ある神社には、御師と呼ばれる神社の御札を全国に配る神職がいた。
各地の有力者を巡って、神社の御札を配り、見返りに神饌料をいただく。
黒田官兵衛の祖父も、備前福岡から姫路の広峰山(牛頭天王信仰総社)に上り、秘伝の目薬を製造し、このルートに載せて全国に売りさばき、莫大な利を得た。
これが東播磨の雄・小寺家に仕えながら、最大の軍事力を持ちある程度気ままに行動できた黒田家の財を支えた。

同様に、伊勢神宮の御師によって、全国の有力者に配られた御札の入れ物が「お払い箱」である。
翌年また新しいお払い箱入り御札が届くと、炊きあげてもらうために古い御札を御師に返す。
すると、手元に古いお払い箱が残る。

「うだつがあがらない」は、徳島県脇町にルーツがある。
ここは着物を青く染める藍の全国一の生産地です。
日本にやってきた西洋人が驚いたことに、染め物としてとても難しく、あまり西洋になかった鮮やかな青が、日本にあふれていたこ
とがある。

この本には書いていなかったけど、ジャパンサッカーチームのユニフォームがブルーが基調であることにルーツを見た気がした。
サッカーチームの胸に描かれた3本足のカラスは、神武天皇を紀伊半島南部から吉野に導いた八咫烏であり、熊野三山の守り神である。
古きを大切にする日本文化を継承するところが、僕をジャパンサッカーチームに惹きつける。

脇町の藍で巨富を得た家は、防火設備でもある「うだつ」を屋根の上に上げる。
「うだつが上がる」とは、大商家を意味し、「うだつがあがらない」とはその反対を意味する。
この脇町の「うだつ」は、実際に観に行ったことがあるので、「ふむふむ」という感じで読めた。

「火蓋を切る」は、強大な当時史上最強の武田騎馬軍団を、新兵器の鉄砲で打ち負かした「長篠の戦い」の織田・徳川連合軍にルーツがある。
火縄銃は、銃を立てて銃口から火薬を入れる。
次に弾丸発射用火薬と弾を入れ、長い棒で奥まで押し詰める。
火皿を覆っている安全装置の「火ぶた」を開いて、点火用の火薬を火皿に盛る。
安全のため、一旦火ぶたを閉じる。火のついた火縄を火ばさみに挟む。
銃を構えて、敵を狙う。
「火蓋を切れ」の号令で、安全装置の火ぶたを切る。
「放て」の号令で、敵に狙いを定め引き金を引く。
引き金を引くと、火縄を挟んだ火ばさみが火皿に落ちて、火薬に点火する。
火皿の火が、瞬時に小さな穴を通じて銃身の中の弾丸発射用火薬に引火する。
発射用火薬が爆発して、弾丸が発射される。

「地団駄を踏む」は、今でも世界一の鋼を製造している奥出雲の鉄製造工場「たたら」にルーツがあった。
この地で鉄を多く生産出来たのは、豊富な砂鉄と製鉄工場に必須の火力の源・木材が豊富だったからです。
鉄の最重要部品・玉鋼を製造する過程で、3日間高温を保たなければならない。
そのために常に新鮮な空気を送り込む必要がある。
その送風装置「ふいご」が地団駄で、左右の足で板を踏んでその下の復路の空気を送り込む。
この作業を数分もすれば汗が吹き出し、1時間交代3人制で3日間踏み続けるそうだ。
その作業に新人が入ってくると、ベテランさんはその下手くそぶりに、「あ~まどろっこしい、いらいらするわ。ほんと地団駄を踏むようだ」と表現する。

奥出雲吉田の地に、この「たたら」を見に行ったこともある。
この吉田の25代続く田部家当主が、日本一の山持ちと言われている。
そちらにも興味があり、そのお宅や蔵群を見た。

今度四天王寺さんを訪問するときは、「縁の下」をじっくり見たいし、お伊勢さんでは「お払い箱」を想像したい。
そしてちょっと遠いけど、長篠城と設楽原古戦場も訪問したいという気持ちがムラムラしてきた。
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